……っぽい。
 



そんな珍獣に尽くす飼育員でも、ときには自分の理性をコントロールできないときもある。

俺の欲求が勝ったばかりにクラゲパンツごときでケンカしてしまい、雰囲気も何もないままに告白までしてしまった俺に最大のチャンスが訪れたのは、6月に入ってからだった。


「田原さん、この栄養ドリンクなんですけど、誰が置いていったのかご存じないですか?」


朝から得意先回りを何軒もし、体力的にも精神的にも色々とすり減らしてヘトヘトになって帰社した、午後7時、オフィス内。

ちょうど俺の後ろを通りかかった田原さんという女性社員に、見るだけでも恥ずかしい『ギンギン☆マムッポンDX!!』の茶色い小瓶をコッソリと見せて、小声でそう質問する。

彼女は課の情報通なので、もしかしたら誰が置いていったのか目撃していたかもしれない。


「ああそれ、バナやん」


案の定、田原さんはご存知だ。

さっすが情報通!課の面々の社内恋愛事情にもめっちゃ詳しいのが玉にキズ!

この人には当初から俺の先輩への気持ちに気づかれていて、正直あまり長話をしたい相手ではないのだけれども、先輩がどういう理由で置いていったのかさえ教えてもらえれば、あとはどうとでも言って切り抜けよう。

定時だって1時間半も過ぎているし、今日は疲れたから正直今すぐ帰りたい。
 
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