……っぽい。
 
「あ、そうです、ありがとう……」と、自分から誘ったくせに呆けた調子で答える私に瀧川さんはクスリと笑い、「ちょっと待っててくださいね」と、そう言い残し冷蔵庫に歩いていった。

オムライスが温まるまでの会話は、やはり笠松の料理の腕についてに限る。

瀧川さんは自分の分の食器を用意したりレンジで回るオムライスを眺めたりし、私は彼女に食器の場所を教えつつ、笠松談義に花が咲く。


「笠松君、すっごい器用ですね。ケチャップで卵に『ちんじゅう』って書いてあります、平仮名で。もしかして、橘さんのことですか?」

「あ、おそらくは……。でも笠松、ほんと器用です。自分で“器用貧乏”って言ってたくらい、何でもソツなくこなせちゃうっていうか。たまに嫌になります、私が不器用すぎて」

「えー? 橘さん、不器用なんだ?」

「要領が悪いんですよ、だからこの歳になるまで、まともに恋愛できなかったみたいな。笠松に色々と叱られて、いかに今までの恋愛経験が悲惨だったか痛感させられちゃいました……」

「あら」


といったところで、レンジがチン。

オムライスを温めるミッションを終了した。

あれ、いつの間にか私の自虐ネタになってしまったけれど、そんなの気にしない気にしない。
 
< 211 / 349 >

この作品をシェア

pagetop