……っぽい。
 
大真面目に俺の心配をしている千晶の口調や表情がやけに面白くて、口を付けていたノンアルを思わず盛大に吹き出してしまう。

いやいや嘘だし、信じるなよ。

確かに縛られて喜ぶような変態気質は否めないが、そこまでド変態であってたまるか。


「ちょっ!汚いんだけど!」

「ごめんごめん」


千晶に自分の近くにあった布巾をポイと投げてよこされ、シュワシュワとテーブルの上で気泡を弾けさせているノンアルを自分で始末する。

こういうとき、先輩ならテンパって自分の服で拭いたりするのにな、と密かに思い、目の前で服に飛び跳ねていないか確かめている千晶を少しだけ薄情に感じてしまう自分が、なんだか最低の人間に思えてくるのはどうしてだろう。

いや、いいんだ。

千晶が今着ている服は先輩が普段ローテーションを組んで着ているネグリジェの一つで、ノンアルが跳ねてしまっていたら先輩に申し訳ないと咄嗟に思っての行動だろう。


でも、千晶とつき合っていた頃から、こういうちょっとした違和感を俺は感じていて、少しずつ溜まっていく澱のようなものから目を逸らし続けていたような気がする。

先輩になら「拭いてくれたっていいじゃないですか!」と冗談めかして言えることが、どうしてか千晶にはずっと言えなかったんだよな……。
 
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