……っぽい。
 
一口ノンアルを流し込み、気持ちを切り替えるように話を戻すと、結局指で涙を拭った千晶が少し赤い目をしながら不思議そうな声を出す。

先輩を相手にしている感覚で何気なく言ってしまってから、しまった!とは思ったものの、せっかくのチャンスなのだ、ずっと言えなかったことをお互いに言い合う機会にできたら、たぶん俺たちは本当の意味で別れられる。

そう思い、テーブルに身を乗り出し、目をパチクリさせている千晶に意を決して口を開く。


「他人を気遣うベクトルが、千晶と俺とじゃ、微妙に違うところ。先輩とだと同じ方向で気遣えるから、いつも自然でいられるんだ」

「ベクトル……?」

「そう。今のノンアルだと、先輩はきっと自分の服で拭くと思う。あんまり分かりやすい例えじゃないかもだけど、そういう感じ?」

「へぇ……」


千晶だって看護師だ、医師以上に患者さんと密に関わる仕事についているから、気遣いができないわけはないし、仕事柄、普通の人以上にきめ細やかな気配りが必要とされるだろう。

きっと、千晶と俺は気遣いや気配りの目の付け所が違うだけで、その方向性が俺には千晶よりも先輩が合っている、というような、気質というか、しっくり感の問題なのだ。
 
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