……っぽい。
 
遠回しに“お前も川に入れ”と言われたと捉えたのだろうか、千晶は「冬はさすがに無理よ……」と腑に落ちない様子でぶうたれる。

そんな千晶に本日何度目かも分からない苦笑を返すと、やっぱり千晶は面白くなさそうな顔をして、ふいっとそっぽを向いてしまった。


千晶は別に、冷めているとか情に薄いところがあるとかいうんじゃなく、物事を冷静に捉え、その時々のベストを選択できる力に長けている。

そういう面で無茶をしない千晶の性格は、時に安心材料であり、時に俺にちょっとした不満材料をもたらす存在でもあったというだけだ。


あの頃は、そのちょっとしたモヤモヤの正体が分からないまま自分の中で消化させていたわけだが、はっきりと言葉に出して言えた今は、とてもスッキリとした晴れやかな気分だ。

……俺を見つめる千晶の顔がことのほか怖いので俺しかスッキリしていないのは確定だが。


「あ、でも」

「ん?」

「ジュンノと同じようなこと、前に看護師の先輩に言われたよ。ずっと腑に落ちないままだったけど、今のジュンノや橘さんの話を聞いて、なんとなく分かってきたかもしれない」


すると千晶は、脳細胞のシナプス同士が念願の再会を果たしたようにハッと目を瞠り、感動を滲ませたような口調で早口に言う。
 
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