……っぽい。
それからすぐに課長は自身も課の中に入っていったのだけれど、私はしばらく、自販機の側面に寄りかかったまま動けなかった。
2人は一体、何の話をしていたのだろう……。
混乱している頭で情報を整理してみる。
離れるわけにはいかない、前向きに検討すると言っていた、笠松にしかできない仕事、こういう機会は滅多にない、でも3ヶ月は無理。
そして“笠松ほど適任者はいない”--。
「はっ!フランス!?」
ピンコーン!と早押しクイズのごとく閃いたのは、真人を私の部屋から遠ざけるためについた嘘である3ヶ月間のフランス出張。
思いがけず声が大きくなってしまい、慌てて自分の口を押えて辺りをキョロキョロ見回す。
幸い人影はおらず、バックンバックンと脈打っていた心臓の鼓動は次第に落ち着いてきた。
けれど今度は、ズキズキと胸が痛んでくる。
もしかしたら笠松は、以前から課長にデザインの勉強をするために出張を打診されていたのかもしれなくて、私のことがあるために、なかなか返事ができなかったのかもしれない。
フランスはあくまで真人に鍵を返してもらうための嘘だったけれど、デザインの勉強は、今後もっともっと世にめんこいものを生み出すためにも必ず必要になってくるのではないだろうか。