……っぽい。
けれど--。
「……先輩は何も分かってないです」
「え? それって、どういう……」
「俺がどれだけ不安か、全然分かってない」
それから間もなくして帰宅した笠松からの反応は、私が想像していたリアクションとは大いにかけ離れていて、なぜか悲しそうに微笑む笠松の顔から目が逸らせなかった。
どうして? どうして笠松がそんな顔……。
ズキズキと痛む胸は今にも張り裂けてしまいそうで、バクバクと早鐘を打つばかりの心臓の音が、とても耳障りで仕方がない。
笠松の顔をちゃんと見たいのに視界がぼやけてくるばかりで、喉がつかえて声が出なかった。
喜んでくれると思っていたのに。
「そこまで言われたら行ってくるしかないですね!」って明るく言って、お世辞でもなんでも「先輩には適いません」って褒めてもらって、笠松は照れくさそうに笑うはずだったのに。
どうして笠松が不安なの?
私、笠松にゾッコンなんだよ。
不安なのはむしろ私のほうで、どうして笠松が私なんていう珍獣と結婚したいと思うまでに好きなのか、ってところなんだよ。
「……先輩、は」
しばらくの間、私たちの間に苦々しく、重苦しく鎮座していた空気を震わせたのは、笠松の口からこぼれ落ちた吐息交じりの声だった。