……っぽい。
そうすると、大人しくなった俺を横目で見やり満足げに少しだけ口角を上げると、クラパチ先生は、すっと前を見据えてまた話しだす。
「笠松が『先輩の全部を俺のものにして、先輩は俺からずーっと離れられないようにしたいくらいです』って言ってくれたとき、すごく嬉しかったし、私もそうしたいって思った。けど、4つも年下の笠松に私の人生を背負わせることで、プライベートでも仕事でも不自由をかけさせたり、自分を犠牲にさせることもあるんじゃないかって考えたら、正直、どう答えたらいいか分かんなくなっちゃってね。幸せなはずなのにプロポーズにちょっと不安になったんだ」
「先輩……」
「それをしほりに相談したら、全部笠松に打ち明けなって叱られたの。年上も年下も、学年だって関係ない、笠松ならどんなことでも受け入れてくれるはずだって励ましてくれて」
ペンを握る先輩の手にキュッと力が入った。
あんなにクサい台詞を一言一句覚えていたことにも驚いたが、先輩があのとき“考えさせて”と言っていた背景にあった気持ちを聞いて、鼻の奥がツンと痛くなってくる。
歳の差を考えると先輩がそう思うのも無理はないかもしれないが、先輩は先輩なりに俺のことを思って悩んだり相談したり……そうやって一生懸命に考えて返事をしようとしてくれていたことが、どうしようもなく胸を締め付ける。