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 部屋から少し離れた廊下で、お嬢さんは息をついた。
 階段の隅に座り、膝に抱いたおりんを撫でる。

「……不思議なお人」

 ややあってから、ぽつりとお嬢さんが呟いた。
 初めは貫七にも、何の反応も見せなかったのに、若干気持ちが変わったのだろうか。

 男なのに男として生きられないこの者からすると、貫七のような軽い男は、そりゃあ憎たらしいだろう。
 だからこそ、男をも虜にする貫七のことも、今まで見向きもしなかったのだ。
 が、今の言葉には、そのような棘はない。

「私は誤解していたかもしれないね」

 背を撫でるお嬢さんを、おりんは見上げた。

「政吉よりも、真剣に考えてくれてるような気がする。興味本位でもなさそうだし」

 おりんは慌てた。
 もしやこのお嬢さん、貫七に惹かれているのではないか。

---ちょっと待てよ! 今は男だけど、こいつ女になるかもしれないんだから、ヤバいじゃないか! 男が大嫌いだったくせに、貫七だけは違うとか思い込んだら、かなり厄介なんじゃないか?---

 焦るおりんを抱き上げ、お嬢さんは立ち上がった。
 そして部屋に戻ると、話し合う二人の輪に入る。
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