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 外に出たおりんは、ちらりと甘味処の店先の四人を見た。
 店の者と話をしているのは、もっぱら老人で、娘は床几に腰掛け、お汁粉を啜っている。
 残りの二人は娘の両脇を固めるように座っていた。

 少し考え、おりんはとことこと娘に近付く。
 こういうとき、猫は便利だ。
 立ち聞きも、堂々としても誰も疑わない。

 娘の足先にちょこんと座り、じ、と見る。
 向かって右側の男が、ぎろりと視線を落とした。

 ただでさえ、筋肉隆々の大男だ。
 半端ない迫力である。

 が。

「おお~。猫ちゃんじゃあ~~」

 がばっと上体を折って、おりんにぐいっと顔を近付ける。
 強面を眼前に突き出され、おりんはビビッて後ずさった。

「怖がらなくても大丈夫でちゅよ~。ほれ、にゃんちゃん、おいでおいで~」

 でかい図体を出来る限り小さくし、地を這うようにおりんに近付く。
 ひいぃ、と心で叫び、おりんはぶるぶる震えた。

「そんな震えなくても、乱暴などしませんよ~。可愛いのぅ~」

 ごつい手でおりんを抱き上げ、すりすりと頬擦りする。
 硬い髭がおりんをがっしがっしと擦り、おりんは心の中で泣き叫んだ。
 いかに貫七が良い男かを再認識した瞬間であった。
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