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「で? そいつはどこにいるんだい?」

 娘が核心を突く。
 いまだにおりんに頬擦りする大男から逃れたいのもあり、おりんは、ぐいっと娘のほうへ乗り出した。

「腕のいい産婆の居場所は聞き出せましたがねぇ。別にそんな怪しげな術がどうのとかは、言ってませんでした」

「何だい、そんなのどうでもいいわな。産婆が必要になるのなんざ、もっともっと先のことだよ」

 再び娘の機嫌が斜めになる。
 老人が困っているのを見て取り、大男が抱いていたおりんを、ずいっと娘の眼前に突き出した。

「嬢様、そう苛々しなさんな。ほれ、可愛い猫ちゃんでも抱いてみなされ」

 にこにこと言う大男に冷たい視線を投げ、娘は目の前に突き出されたおりんを見た。
 そろ、と受け取り、膝に乗せる。
 やっと大男から解放され、おりんは娘の膝で、ほ、と息をついた。

「……野良かしら? にしては綺麗ね。人に懐いてるし」

「でも首に目印もついてませんし、いっそのこと、嬢様がお飼いになったらどうです?」

 大男が言う。
 おりんは、ぎ、と男を睨んだ。
 冗談ではない。

 が、娘はおりんを抱え上げ、正面からまじまじと見ると、こくりと頷いた。

「そうね。綺麗だし、賢いわ。連れて行こうかしら」
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