私の居場所
「要りませんよ。今までだって必要なかったでしょう?」

私はそう言って、コーヒーを啜った。

「面倒になったら、ここに泊まる事もあるかもしれないだろう。こんなに工場は近いんだぞ。」

真面目な顔をしてそういう福山さんの顔を見て、私は笑った。

「有り得ませんから。家に帰る事が面倒に感じる事は有りません。」

時々福山さんは訳の分からない事を言う。

「俺が帰さないかもよ。」

妙に色っぽい顔をこちらに向ける福山さん。

一瞬ドキッとするようなその顔。

「そしたら朝御飯の作り置きも必要なくなるだろう。」

ああ、そういう事か。

びっくりさせないでよ。

「でも親に心配を掛けるぐらいなら、ちゃんと帰ります。」

それに関しては、福山さんは何も言えなくなってしまうようだ。

私がこれ以上親に心配かけたくない気持ちをちゃんと理解してくれているから。
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