オトナの恋を教えてください
注文が届く前に、一匹の猫が近付いてきた。
ノルウェージャンかな、毛足の長い白地に顔と背が茶色の可愛いコだ。


「お、よもぎ。来たな」


柏木さんが声をかけると、まるでわかっているかのように脚に擦り寄ってくる猫。


「よもぎって、このコですか?」


「……そうだよ」


一転、バツの悪そうな顔になる柏木さん。
どうやら、発作的に呼んでしまったようでしたけど、
柏木さん、もしやこの店の常連でしたか?

今、ご指名のよもぎちゃんが来てくれて、さらっと新密さを見せちゃったこと、後悔してるでしょう。


「誤解するなよ」


思いっきり言い訳っぽく、柏木さんが言う。


「前、付き合ってた子が猫好きで連れてきたことがあるんだよ。それだけだから」


しかし、とても一度か二度の出会いではないことはよもぎが証明している。
よもぎは柏木さんの膝にひらりと飛び乗ると、甘えたように顔を上げたからだ。

ねえ、のど撫でて。
とでも言うように。
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