オトナの恋を教えてください
雑踏の中、抱き締められるなんて、ドラマの中だけのことだと思っていた。
現実に起こってることが信じられない。
そして、私を抱き締めているのが、柏木さんであるという紛れも無い事実。

額に柔らかい感触を覚えた。
それが柏木さんの唇だと気付いたのは、キスが終わってからだった。


「ファーストキス。おでこだけど」


柏木さんがいたずらっぽく言い、子どものように笑った。

そんな無邪気な顔、するんですね。

私は緊張で潤んだ瞳で、彼を見上げる。


「……ありがとう……ございます」


本当に嬉しくて、幸せで、泣いてしまいそう。
このままいたら、もっと離れがたくなる。

私は抱擁からゆっくりと逃れ、頭を下げた。


「また来週!失礼します!」


踵を返すと、改札まで階段を駆け上がった。
後ろを振り向かないように注意して。





< 108 / 317 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop