オトナの恋を教えてください
「はい、どうせ私は近い将来、会社を辞める身ですから。我慢も少しの間だけ。むしろ、誰とも交際されない柏木さんを一時でも独占できたんです。そのくらいのペナルティは受けるべきでしょう」


いろはは弱々しく笑って見せる。

なんて、けなげ……なんて思うかっつうの、バーカ。

俺は苛立ちの矛先にあらためて気付いた。


「なんかそれってムカつく発言なんだけど」


「え?」


「辞めるから、いじめられてもいいって、ナニソレ。究極の逃げ発言だな」


俺は吐き捨てるように言う。

苛立っているのはいろはのスタンスだ。


「いろはの思考の根底にはいつもある。『どうせ』っていう卑屈が。いじめられるのも、結婚も『どうせ』逃げられない。それなら仕方ないから受け入れる。……すっげぇムカつく」


いろはは俺の怒りと苛立ちに困惑している。
そりゃそうだろう。

いろはの考えでは、いじめに対抗しないことも母親に反抗しないことも同義だ。賢い選択のひとつだ。

だけど、それは『屈している』ことになるんだ。

屈した人生を送るヤツに幸せなんかこない。
絶対にこない。
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