オトナの恋を教えてください
私が手を差し出す。柏木さんの手が重なる。

合図をしたかのように、よもぎがひらりと退き、柏木さんが立ち上がった。

立ち上がる勢いで一瞬、風のように彼が私を包んだ。
ほんの一秒ほど、肩を抱かれる。

すぐに抱擁を解き、手を離すと、柏木さんは先に立って歩き出した。


「行こう、いろは」


私は頷き彼の後に続く。

あと何度、私たちはこんな日々を繰り返すのだろう。

未来への希望を感じないわけじゃない。
だけど、もどかしい寂しさは消せない。

柏木さん、
何年もこのままで我慢できなくなったら、
私、お嫁に来ちゃうからね。

荷物まとめて、
勝手に来ちゃうからね。


彼の背に抱きつきたい衝動を抑え、私は玄関で靴をはいた。






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