課長の独占欲が強すぎです。
「宍尾さん真面目だからね。有栖川さんに次もいい作品を書いて欲しくて全力でサポートしてたつもりなんだ、本人は。けど……それが裏目に出ちゃってね。有栖川さんに訴えられちゃったんだよ。『担当編集者が異常な圧力を掛けてくる。これはパワーハラスメントだ』って」
想像もつかなかった事の成り行きに、私は一瞬息を飲んだ。
だってまさか、あの和泉さんが? 強引だけども人の気持ちは絶対ないがしろにしない和泉さんが、そんな訴えをおこされるなんて。
「有栖川さんも精神的に参ってて判断がおかしくなってたんだと思うよ。まあ結局、担当編集を変える事で話はついて大事にはならなかったんだけど」
「そんな……。それで、和泉さんは? それが原因で編集部から異動させられたんですか?」
「いや、それが他部署への異動を申し出たのは宍尾さんの方なんだって。会社も宍尾さんが真面目にやってた事も有栖川さんが精神不安定な事も分かってたから、宍尾さんへの大きなお咎めは無かったって。けど、どうしてもって強い希望で宍尾さんは編集部から別の部署……少女漫画の営業課に配属されたんだ」
……胸が痛い。うっかりすると涙が出そうになってしまうのを、私は唇を噛みしめてこらえた。
昔の事でまだ若かったとは言え、真面目で人一倍仕事熱心な和泉さんがそんな辛い想いをしていたなんて。
当時彼が有栖川栞と云う作家と作品にどれほどの情熱を掛けていたかと思うと、胸がキリキリと痛んで仕方なかった。