課長の独占欲が強すぎです。

「デートだなんて、そんなんじゃありません! 私はただ……東主任に話があって……」

「何の話だ」

 困った。まさか和泉さんと有栖川さんの過去を聞いていたなんて言えない。嘘をつくのは嫌だけど、これ以上こじらさせても仕方ないので私は「頼まれてた資料の件で」と話を濁しておいた。

 和泉さんは納得したのか、強すぎる視線を私から外すと再びお皿を拭き始める。

「仕事の話なら仕事中に済ませろ。いちいちふたりきりになるな」

 相変わらず凄まじい独占欲だなあと改めて実感しながら、私は「はーい」と返事をした。

 本当は『和泉さんヤキモチ妬きすぎ』と反論しようかと思ったけれど、嫉妬に関しては自分も負けてなかったなと思い返してやめておく。

 相手にそのつもりが無くったって、ヤキモチを妬くと云うのは苦しいものなんだと最近知ったばかりなのだから。

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