課長の独占欲が強すぎです。
「すみません……」
消え入りそうな声で謝ると、私は顔を俯かせて早足で自分の席へと戻った。お腹に力を入れてないと涙が零れそうだった。
周りの人が私を心配そうに眺めてるのが分かったけれど、唇をキュッと噛みしめてひたすらモニターを見つめ続ける。頭の中を数字でいっぱいにして『あんな言い方しなくったっていいのに』とか『やっぱり宍尾課長恐い、苦手だ』なんて渦巻く感情を無理矢理消し去るように努力した。
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「宍尾課長なんて、大っきらい〜」
その日の夜、私は同期の杏子ちゃんのアパートで日向夏サワーを煽りながら宍尾さんへの不満をぶちまけていた。
「もう、小夏ってばそればっかり。せっかく憧れの部署に行ったのに、もうちょっと明るい話はないの? 素敵な男性社員がいたとか、恋に堕ちそうな予感がしたとか」
そう言いながら杏子ちゃんは空になった私のグラスにサワーのお代わりを注いでくれる。ひまわり出版に同期入社した春日杏子ちゃんは経理課の所属で、今現在私が1番親交を深めている友達だ。
恋愛ごとに興味がありすぎるのが玉にキズだけど、しっかり者で面倒見が良く、今日も私の部署移動を手料理と宅呑みで祝ってくれている。