課長の独占欲が強すぎです。

 有栖川さんに向かってペコリと軽く頭を下げると、彼女も「先程はみっともないとこをお見せして……」と恥ずかしげに会釈を返す。

 そんな私たちの様子を見ていた和泉さんがふいにソファーから立ち上がって、有栖川さんの正面に対峙した。

 1回こちらを振り返り「小夏。お前もよく聞け」と告げてから、和泉さんは戸惑っている有栖川さんに向かって話し出す。

「有栖川さん。私は何度頼まれようとも貴方の担当編集者には戻りません」

 いきなり言い切った和泉さんの言葉に、有栖川さんの表情がみるみる悲しそうに曇っていった。けれど、和泉さんは視線を逸らすことなく話を続ける。

「申し訳ないと思っています。けれど、私が戻ったところで貴方の為にはならないと僭越ながら考えてもいます。誰かが居るから書けない、誰かが居ないから書けない、そんな事に囚われていてはいつか貴方は自分を見失います。有栖川さん、自分をもっと信じて強く生きて下さい。……それが、出版に携わる者として、貴方の作品を愛するいちファンとして、私から有栖川栞への唯一の激励です」

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