課長の独占欲が強すぎです。

***

 どうしよう。困った困った。

 意味も目的もさっぱり分からない海への強制連行予定に、私の頭は忙しい仕事のことと相まってパンクしそうだった。

 それでも頑張って気を取り直し、なんとか午後の業務を必死にこなす。そうして終業時間より90分ほど残業でオーバーした午後6時半。ようやく切り上げ所を見つけた私は、まだ残業している社員たちに挨拶と激励の言葉を残し退社する事にした。

 宍尾さんに海の件で問い詰めたかったけれど、それどころでは無い忙しさのようなので「お先に失礼します」とだけ頭を下げてフロアから立ち去る。

 外に出るとまだ空は明るさを残しており、紫と茜の綺麗なグラデーションに染まっていた。

「橘さん」

 空を見上げていた所に急に声を掛けられて驚いて視線を戻せば、ようやく帰社してきた東さんがトロリーバッグ片手にこちらに向かって来る所だった。

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