課長の独占欲が強すぎです。

「橘さん、なんだか放っておけなくてさ。可愛いし、もっと一緒にいたいってずっと思ってたんだ。俺、真剣だから。答えは後でいいけど本気で考えてみてよ」

 赤くなった顔で目をしばたかせるばかりの私に東さんはそう告げると、残っていたサンドイッチを袋に戻し「また後で」と頭をポンポンと撫でてから、立ち去って行った。

 ひとりベンチに残された私はボーゼンとしたままいつまでも動けないでいた。だって、告白されたのなんて何年ぶりだろう。高校生の時以来だ。

 突然の恋の訪れの予感に私は頭を冷静に戻すまで長い時間を要し、その結果ひとりでは考えきれないと判断し、潔く友人の杏子ちゃんに縋る事にした。

***

「海に誘われて告白された?」

「違う違う、告白してきたのは東主任で映画に誘われたの。海へ強制連行しようとしてるのは宍尾課長」

 急な相談にも関わらず、杏子ちゃんは部屋に招き入れてくれ自慢の手料理を奮ってくれた。こごみの胡桃和えとお手製の林檎酒をチビチビやりつつ、私はキャパシティを超えてしまった今日の出来事を全部ぶちまける。

「へー、小夏が上司にねえ。いいじゃんいいじゃん、遅い春到来。で、どっちと付き合うの?」

「どっち?」

 私の相談に二択などあっただろうかと疑問の目を向けると、何やら余計にややこしい状況を生み出されてしまった。

「東主任に告白されて、宍尾課長にもデートに誘われたんでしょ。どっちを選ぶの?って話よ。まさかあんた、二股掛けるつもりじゃないでしょうね」

「何言ってるの杏子ちゃん!?」

 どうして宍尾さんまで付き合う候補に上がっているのか。杏子ちゃんの言葉に私は全力で首を横に振り否定を強調した。

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