片道切符。
「つらかった……最後に、バンコクに行く前に…最後にもう一度だけ……真宙に会いたかっただけなのに、話がしたかっただけなのに…目線すら合わせてくれないんだもんっ…」
ぎゅっと拳を握った彼女が、どんっと俺の胸を叩く。
「そのくせ…っ……ピンチのときには、助けに来てくれるから……」
ぽろり、彼女の瞳からまた涙が流れる。
「優しくしないでよ…急に、昔の真宙に戻らないでよっ…!
もうだめなんだなって、真宙のことは過去にして、前に進まなきゃいけないんだなって、そう思ったのに……気持ちに、整理がつかなくなるじゃない。
あんな風に……まるで私のことを大切にしてくれてるみたいに、大事そうに抱きしめて寝たりしないでよ……!」
あの夜の俺は…決して、紳士的だったとは言えない。
懇願する愛実に、どうしようもなく情が沸いて、一方で今さら都合よく煽るなよっていらつく自分がいて……長年封じていた想いを解き放つように、強引に抱いた。
「………ねだったのは、そっちだろ」
反論した声は、小さく、掠れた。
途端に彼女の顔がゆがみ、ぶつかるようにして、俺の胸に飛び込んできた。
「……好き」
くぐもった声で、だけどそれははっきりと俺の耳に届いて、頭の中でこだまする。
「真宙が、好きだよ…」
「っ…!」