雨に似ている 改訂版
希望は……
九月も終わりだというのに未だに陽射しが眩しい。

学園祭の準備で学園が活気づいている。

校内のあちらこちらで様々な話し合いや作業が行われている。

「芸術の秋」と言われる此の時期。

音楽科は各種コンクールが立て続けに行われるだけあって、放課後の練習室は何処も予約がいっぱいで、割り込める隙さえない。


練習室の予約に溢れた学生が屋上で練習する姿も珍しくない。

詩月はピアノ課主任西之宮のレッスン中、ピアノ演奏を酷評され失意のまま1人、屋上でヴァイオリンを握りしめた。


ーーもう、いいだろう?! 母さんは腱鞘炎の痛みに耐えきれず、薬で痛みを抑えながらヴァイオリンを弾き続けて無理をし指を壊しヴァイオリニストを断念し、それでも辛さ悲しみを乗り越えようとヴァイオリン教室を開いたのか? 僕を産み、誰より悩み苦しみながら僕を育てヴァイオリンを教えることで音楽に携わっているのだろうか

詩月の胸に様々な思いと疑問が巡る。

詩月は母親を「貴女は強いな」と思う。

僕はとてもそんなに強くはなれないとも。

自分なりに精一杯、ピアノを頑張ってきたつもりだ。

それでも自分自身では父親似のピアノ演奏をピアノを変えられそうもないと思った。
< 100 / 143 >

この作品をシェア

pagetop