雨に似ている
この曲は、リストがパガニーニの原曲を編曲したピアノ協奏曲でも有名だ。

パガニーニは19世紀前半に活躍した音楽的にも技術的にも優れた作曲家であり、ヴァイオリニストとしてもヴィルトウオーソと呼ばれるほどの演奏家だった。

 彼の演奏は人間業ではなく、悪魔の仕業だとも評判が立つほどで、彼は「悪魔に魂を売り渡したヴァイオリニスト」とも言われたそうだ。

ラ・カンパネラ=神の鐘。澄みきった透き通るような音、崇高で神秘的な音色。

貢の弾くバイオリンが、研ぎ澄まされた心が洗われるような調べを奏でる。

目の前に教会の鐘の鳴り響く様が浮かび今まさに、その音を聞いているような気がしてくる。


正調パガニーニ、楽譜通りの完璧な演奏だ。

高音の輝くようなバイオリンの響きに、郁子の弾く甲高いピアノの音が程好く重なり、貢のバイオリンを支えるように詩月のバイオリンが優しく歌った。

理久は最前列で詩月の様子をみながら2曲続けて演奏を聞いていたが、詩月を心配し「少し休んだほうがいい」と声をかけた。
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