雨に似ている 改訂版
理由
何処からともなく聴こえてくるビアノ演奏。

貢はハッとし、耳を澄ませる。


放課後。
学オケの練習に向かおうとしていた貢は、練習室の前で足を止めた。

郁子もピアノの音に惹かれたらしく、貢の隣で扉越しの演奏に耳を傾けている。


「貢、この完璧なピアノ演奏って……彼!?」

2人は、先日の「カフェ·モルダウ」での、詩月の演奏を思い浮かべてみる。

暖かく優しいピアノの音色は、先日の「雨だれ」ではない。

曲は違うが、言葉を失うほど見事な演奏だと思う。

だが、やはり2年前のコンクールで聴いた詩月の演奏とは、何かが違うように思える。


「この演奏って、誰かの演奏に似ていないか?」

漠然とした曖昧な感覚。

単に曲が違うからではない。

曲の解釈が違うとか、タッチが違うとか、上手い下手でもない。

どう言い表せばばいいのか、はっきりと言葉にできない。

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