極上ドクターの甘い求愛



『私、あの人キライなんですよね~!クールぶってて、いっつも前田さんに助けてもらってて、自分がいつも正しいって顔してて、所詮岩崎先生の腰ひもなのに、いっつも先生の周りをウロチョロしてて。』


小島さんの悪びれもない、ストレートすぎる言葉たちが、その場に立ち尽くすしかない私の心を容赦なく抉っていった。

――そっか、小島さんは…岩崎先生ファンだもんね。

大事なことを、ようやく気付くバカな私。

小島さんは私のことを非難したりしない、冷徹な目を私に向けない、なんて、全て私の思い違いだった。


薬剤部の中で一番私を嫌っているのは小島さんだった。

私に表面上の人懐っこさを見せながら、心の中で私を忌み嫌っていたのは、小島さんだった。

そんなことにも気づかないなんて――バカすぎるよ。


『このまま、病院辞めてくれませんかね~?』

「~~~…ッ」


このまま小島さんの言葉を聞いていたら、涙を零してしまう。

それは、私が最もしたくない行為だった。職場で泣くなんて、そんなのは大人になりきれていない子供がすることだ。みっともない。そんな恥さらし、余計に周りから反感を買うだけだと分かっている。

だから、ドアノブにかかっていた手をゆっくりと離して、薬剤部に背を向けた。

職場で絶対泣くもんか。

ただそれだけのプライドが、今の私を律していた。



< 174 / 234 >

この作品をシェア

pagetop