極上ドクターの甘い求愛
『私、あの人キライなんですよね~!クールぶってて、いっつも前田さんに助けてもらってて、自分がいつも正しいって顔してて、所詮岩崎先生の腰ひもなのに、いっつも先生の周りをウロチョロしてて。』
小島さんの悪びれもない、ストレートすぎる言葉たちが、その場に立ち尽くすしかない私の心を容赦なく抉っていった。
――そっか、小島さんは…岩崎先生ファンだもんね。
大事なことを、ようやく気付くバカな私。
小島さんは私のことを非難したりしない、冷徹な目を私に向けない、なんて、全て私の思い違いだった。
薬剤部の中で一番私を嫌っているのは小島さんだった。
私に表面上の人懐っこさを見せながら、心の中で私を忌み嫌っていたのは、小島さんだった。
そんなことにも気づかないなんて――バカすぎるよ。
『このまま、病院辞めてくれませんかね~?』
「~~~…ッ」
このまま小島さんの言葉を聞いていたら、涙を零してしまう。
それは、私が最もしたくない行為だった。職場で泣くなんて、そんなのは大人になりきれていない子供がすることだ。みっともない。そんな恥さらし、余計に周りから反感を買うだけだと分かっている。
だから、ドアノブにかかっていた手をゆっくりと離して、薬剤部に背を向けた。
職場で絶対泣くもんか。
ただそれだけのプライドが、今の私を律していた。