極上ドクターの甘い求愛
薬剤部の隣室である着替え室のロッカーから貴重品を手にした私は、薬剤部の方たちとは顔を合わせないように院内の購買部に駆け込み、2つほどのパンを購入すると、その足でフラフラと病院を出て中庭のベンチに腰掛けた。
この憂鬱な気分で、賑やかな職員用の食堂に行く気には、到底なれなかった。
(……あ、飲み物買うの忘れた。)
購買で買ったメロンパンにかじりついていると、購買部で飲み物を買い忘れていたことに気付く。
今の私は、悪い方向に頭のネジを一つ、薬剤部前で落としてきてしまったらしい。
いつもより少し早い昼食。昼食を1人で済ませることなんてよくあることなのに、今はなぜか寂しくて、人肌恋しく感じてしまうから情けない。
ただ悪口言われただけじゃない…。何でこんなに落ち込んでんのよ…。
予想以上に自分のメンタルが弱かったことが悔しくてたまらない。もっと、強くなりたい。そう思った時、
――ピトッ
「~~~ッ!?」
突然、右頬に冷たい何かがあてられて、驚きのあまりに声を上げることもままならずに体をビクつかせた。
何があたっているのか、反射的に右方向に視線を上げると、そこには私の反応を面白がっているのか、笑いをこらえた日野くん。その手には、冷たい紅茶のペットボトルが握られている。
どうやら、その紅茶が私の頬にあてられていたらしい。
『クク…ッ、あははっ!』
「っ、日野くん!驚かさないでよ!」
『わりーわりー、つい俺のイタズラ心に火が付いて――…っつーか、今の驚き方、尋常じゃなかったな。』
「あったりまえでしょう!?」
笑顔で謝られても、何の説得力もないんですけど。
ゲラゲラと声を上げて笑う日野くんは、自然な動作で私の隣に座った。