極上ドクターの甘い求愛
『――やるよ。』
「えっ?」
笑いをやっと抑えてくれた日野くんから、ずいっと差し出されたのは紅茶のペットボトル。
『さっき購買で買ったんだけど、俺飲めねーんだったわ。』
「……何やってるのよ。っていうか、明日手術でしょ?安静にしてないと――」
『退屈なんだよ。ちょっとでいいから、俺の話し相手になってよ。な?ほんの少しだけ。』
「………別にいいけど。」
そう言われてしまっては、話し相手になるしかない。
日野くんの退屈な気持ちも、分からないわけではないから。
大人しく差し出されていた紅茶も受け取った。日野くんが買ったそれは、無糖の紅茶だった。……もしかして、最初から私に渡すために?――なんて、そんなわけないか。
己惚れるな、と自分に喝を入れつつ、私は日野くんに声をかける。
「本当に動いて大丈夫?痛みは?」
『痛み止めが効いてるから、大丈夫。そんな心配すんなよ。』
「心配するよ!だって、日野くんは私の患者さんなんだから。」
あまりにも日野くんが元気そうにしているから忘れそうになっちゃうけど、日野くんは病人だ。医療人として、患者さんの様態を気にしないわけにはいかない。
『……患者、か。』
「え?」
『いや、何でもない。…それより、何かあったのか?』
一瞬切なげな表情を見せたかと思うと、すぐにそれを隠した日野くんは、いきなり核心を突くようなことを聞いてきた。