極上ドクターの甘い求愛
「…別に、何もないよ。」
こんなプライベートなこと、再会したばかりの日野くんに言えるわけない。
『…さっき、購買でお前見たぜ。』
「えっ?」
『咲坂!って呼びかけたんだけど、めちゃくちゃスルーされた。…あれ見て、何もないなんて言われても納得できるわけないだろ。』
私に注がれる日野くんの真剣な眼差しに、息を飲む。
その瞳は、私に早く言えよ、と急かしているようにも見えた。
「…そんな、大したことじゃないよ。」
『何でそんなに隠すんだよ。』
「…日野くんには関係ないことだから。」
もう私達は、昔の時のような関係じゃない。何でもかんでも言いあえるような、そんな親密な仲でもない.
今の私と日野くんは、薬剤師と患者の関係で、医療人である私が、患者さんの前で弱音を吐くことなんて、許されない。
"日野くんには関係ない"
その一言で、何故か執拗に迫ってくる日野くんを遠ざけた。
『…あるよ。』
「え…っ?」
――はずだった。