極上ドクターの甘い求愛
――岩崎 Side――
『…すみません、失礼します。』
「あっ――!」
まるで俺から逃げるように、調剤室から出てきた繭ちゃんは俺の横を素通りして行ってしまった。
昨日も今日も、繭ちゃんと一緒にお昼ご飯を食べようとここに来た俺だけど…繭ちゃんの仕事が立て込んでいるという理由でその誘いを断れ続けている。
最近、そんなに調剤量が増えたのか…?そんな疑問が脳裏によぎるが、ここ最近急患が多く搬送された記録はないし、空き床ベッドも各科である程度確保されている。
繭ちゃんがお昼休憩を潰してまで仕事しなきゃならないほどじゃないんはずなんだけど――。そのことが、妙に頭に引っ掛かった時だった。
『…岩崎先生。こんなところでどうかされましたか?』
「っ、……前田か…。ビックリさせるなよ…。」
突然、後ろからかかった声に驚きで心臓が飛び跳ねた。
振り向くと、愛想笑いを浮かべた同期で繭ちゃんの良き先輩の前田が俺を見つめていた。
『…あの、話があるのでお昼、付き合ってくださいよ。』
「え、でも――」
『咲坂ちゃんのことで。…ね?』
さすが同期。
どう言えば俺が食いつくかをよく分かっていらっしゃる。
まぁ、なんて言われようとこの背後にブラックオーラをまとった前田の笑顔を見てしまったら何も断れないんだがな…。
「…じゃあ、食堂でいい?」
『ええ。』
こうして、繭ちゃんと過ごすはずだった俺の癒しの時間は、前田によって恐怖の時間と化したのだった。