極上ドクターの甘い求愛



『…さっきのことだって、そうよ。咲坂ちゃんがお昼休憩に入ろうとする頃合いを見計らって、ワザと重たい調剤を咲坂ちゃんに任せて、咲坂ちゃんの昼休憩を潰したのよ。』

「何で、そんなこと、」

『昼になったら、岩崎が咲坂ちゃんを誘いに来るって分かっていたから、咲坂ちゃんをアンタと一緒にさせないために決まってるじゃない。』

「っ……!」


そんなことも分からないの?と、驚愕の事実に体が固まっている俺を見つめる前田の瞳が言っていた。

繭ちゃんから俺を遠ざけるために、ワザと?

だから、俺の誘いを断ったあの時、繭ちゃんはあんなにもいたたまれなさそうな表情をしていたのか?

嫌がらせの目的を、理解していて、それなのに、俺に何も言わずに。


『ここ最近、咲坂ちゃんの様子がおかしいのよ。前だったら、自分で抱えきれない仕事は私や周りに頼んでいたのに、ここ数日どんなに重たい仕事を回されても、何も言わずに、私にも助けも求めずに、何でもかんでも1人でやろうとするの。私から手伝おうかって聞いても、大丈夫の一点張りで。……ちゃんと私に頼るように、言ったはずなのに。』


責任感の強い繭ちゃんのことだから、無理に何かを抱え込んでいるのだろう。

でも、そのことを本人が何も話してくれないから、前田は悩んでいるようだった。繭ちゃんの助けになりたい、なのに頼ってくれない、そんな前田の想いが伝わってくる。


『いつか咲坂ちゃんが壊れる前に…助けてあげて。』


前田のSOSは、俺の心の危険信号をオンにした。


『咲坂ちゃんを助けることができるのは…アンタしかいないのよ。岩崎。』


前田の言葉と、繭ちゃんの笑顔が脳内で交差した。

俺が繭ちゃんを守らなきゃいけないと、再び思った。



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