極上ドクターの甘い求愛



翌日の午後、私は服薬指導をするために消化器内科に来ていた。


「…お大事に。失礼します。」


穏やかな雰囲気で病室を後にした私は、薬剤部へと戻ろうと階段がある方へと歩を進める。

消化器内科は消化器外科と隣接しているため、階段に辿り着くには消化器外科のナースステーション前を通らなければならない。

この病院には東階段と西階段があるけれど、西階段のほうが圧倒的に早く薬剤部に辿り着くことができるため、否が応でも西階段入り口に続く消化器外科のナースステーション前を通らなければならなかった。

遠回りしたいけど、戻るのに時間がかかったらかかったで、薬剤部の人達に嫌味言われる。でも、ナースステーションの前を通れば、私の悪口をたたかれるのは目に見えてる…。

逃げ道を全て塞がれて心が沈んでいくのを感じながら、出来るだけ消化器外科のナースさん達に見つからないように顔を俯かせて通り過ぎようとした時だった。


『あの人、岩崎先生を誑(たぶら)かして、406号室の瀬戸さんにも言い寄ってるんだって!』


通り過ぎようとした消化器外科のナースステーションの奥から、怒りを含んだ甲高い声が聞こえて、私は反射的に進めていた足を止めてしまった。



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