極上ドクターの甘い求愛
『ウソでしょ!?患者に手出すなんて、ヤバくない?』
『ウソじゃないって!だって私見たもの!火曜の昼、院外の中庭で瀬戸さんとベンチで談笑してるとこ!瀬戸さんってイケメンだし、若いし、岩崎先生に相手にされないから、そっちに乗り換えたのよ!』
ナースさん達が嫌悪を隠しきれない、とでも言うように噂している標的は、やっぱり私だった。
5日前のこと、見られてたんだ…。
確かに、あそこは見晴らしが良いから、院内でも中庭の様子は見える。私と日野くんの関係なんて岩崎先生以外には誰にも話していないから、中庭での私達を見たナースさんがこうやって私のことを悪く言うのも、仕方のないことだと思った。
『岩崎先生の腰ひものくせに、ムカつくー!』
『岩崎先生優しいから仕方なく笑顔で接してるだけなのに、何勘違いしてんのよって話よね~!』
『顔も心もブスなんだから、大人しくしとけばいいのにさー!』
私がすぐ近くにいることなんて気付かずに、私への批判を容赦なく廊下にまで響き渡るように話しているナースさん達の蔑むような笑い声が、私の資料を持つ手を無意識に震わせた。
…一体私は、どれだけの悪口を言われなきゃいけないんだろう。
その刃物のような言葉を、私はこれから何回聞くことになるんだろう。
顔も名前も知らない人に、こんなに嫌われるなんて。……私の心は、とっくに悲鳴をあげていた。
でも、誰かに助けを求めることなんてできない。岩崎先生はもちろんのこと、前田先輩にだって、相談もできない。私が前田先輩にSOSを発信すれば、後輩想いの先輩はあらゆる手を使って私をバックアップしてくれるだろう。私を支えようとしてくれるだろう。
でも、そうなれば、また小島さんたちに、私はすぐ前田先輩に頼る、というレッテルをまた張られてしまう。
いつもお世話になっている前田先輩には、迷惑をかけたくない。私のせいで、前田先輩まで周りに敵を作るような真似をさせてはいけない。――先輩には、言えない。そう思った。
だから、どんなに前田先輩に大丈夫かと聞かれても、何か手伝おうかと言われても、平気な顔して笑って大丈夫だと言い続けた。