極上ドクターの甘い求愛



「先生に嫌がらせのことを言ったら、私から離れていくんじゃないかって思って怖かった…!面倒な存在だと思われるのが嫌だった…!私がお利口にしていれば、先生はずっとそばにいてくれるはずだって、そう思って…ッ」


心の奥底にいた自分はとても臆病者だった。

先生に嫌われないために。先生に幻滅されないために。先生と一緒にいるために。

つい先ほど静めたばかりの涙が、また大粒となって溢れ出す。

涙で視界が霞んでしまって、今岩崎先生がどんな表情をしているのか全く分からないけど、握られたままの手から伝わるぬくもりは変わらなかった。


『繭ちゃん…俺のこと、好き――なの?』

「ッ――!」

『繭ちゃんのその"大切"は、"好き"から来るものだって思ってもいい?』


喉に引っ掛かったまま言葉として出せなかった"好き"の2文字を易々と紡がれて、途端に目が泳いでしまった。

あれだけ言えば、いくら鈍感だといわれる人でも分かるだろう。

ここでウソをつけるほど、私は器用な人間じゃない。


「もうどうしたらいいのか、分かりません…!」


この苦しい気持ちはどうしたらいいのだろう。

私の知らない所で芽吹いて私ひとりじゃ手に負えない程成長してしまった先生への想いは、どうしたらいいの?


「先生のことが、好きで、好きで、大切すぎて…っ、私、どうしたらいいか――ひゃっっ!?」


一瞬、何が起こったのか分からなかった。

気付いたら、私は先生の腕の中にいて。

さっきも抱き合っていたはずなのに、それもどこか遠くの出来事のように感じている自分がいた。



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