極上ドクターの甘い求愛
『繭ちゃんのマンションより、俺のマンションの方がセキュリティもバッチシなのに?』
「明日、早出なんです。…なんて言おうと、帰ります。」
ハンドルを握る岩崎先生がわざと速度を落としてベンツを走らせていることくらい、知っている。
けど、そのことについては何も触れずにいた。
……実際、先生と一緒にいたいという気持ちは、私の心の中にも確かに存在しているから。
だからといって、お泊りはできないけど。
『一応言っとくけど、繭ちゃんを帰したくなくてたまんないんだよ?分かってる?』
「ッ……」
信号が赤になった瞬間、ベンツをゆっくりと停車させた先生は、私の座っている助手席に顔を向けた。
分かって、――る。
けど、そんな恥ずかしいこと、己惚れているようなこと、言えるわけない。
そう思って口には出せなかったものの、かぁああっと頬に集中していく熱を抑えることはできなかった。
『……またそんな顔して。無意識に俺を煽ってくるんだから、繭ちゃんって魔性だよね。』
「へ……っ?」
ゆっくりと近づいていた先生の顔が、不意に遠のいて行ったと思ったら、ベンツが発車した。
驚いて前方を見れば、赤だったはずの信号機が青色に点灯している。
それ以上は何も言わなくなった岩崎先生を盗み見ながら、まだ抑えられない熱を、必死に車窓から入ってくる夜風で冷まそうとした。