極上ドクターの甘い求愛
腕にハメていた時計の時刻を確認すると8時を回っていた。
飛行機が苦手な旦那さんは新幹線で東京に戻ってくるらしい。
『まだ大丈夫よ。あと30分くらいはいるつもり――…あー、いや、もうお暇しようかな。』
「えっ?」
私から目を逸らした先輩は、突然に帰ると言い出した。
30分はここにいるって言ったばかりなのに…何で?
「どうかしたんですか?」
『ん?ほら、東京駅の近くって割と混んでるじゃない?待つの苦手な人だから今のうちに行っておこうかなって。』
「え、でも今の時間、そんなに混んでないんじゃ…?」
昼間とか通勤・通学ラッシュじゃない今の時間帯なら、東京駅周辺の公道も空いてたはずなのに。
私よりも東京に住んでいる時間が長いはずなのに、先輩はそそくさと帰る準備を進めて行く。
『じゃ、私は帰るね!』
「ちょっと、せんぱっ――」
『お疲れさまでしたー!』
私の言葉を丸無視した先輩は、薬剤部の方々に颯爽と挨拶をして、風のように去っていった。
取り残された私に待ち受けるのは――ぼっち、ということだけ。