労苦
 一課長の吉村も、理事官や各管理官も俺たちの動きを掴んでるようで、実際のところ掴んでない。


 もちろん、俺たちも捜査員なのだが、正式に捜査許可が下りているわけじゃなかった。


 掟破りなのだが、それぐらいしないと、刑事事件の捜査は進まない。


 そしてずっと一課のフロアと現場を往復した。


 金曜の午後、南新宿の街を歩き、内田晶夫が経営していた人妻クラブ、ムーンの前に行く。


 店はガランとしていて、誰もいない。


 ここの主も逃げたからな。


 そう思いながら、店の中を見ていると、奥に金庫が一つ置いてあった。


 開錠するのに五桁の数字が必要だ。


 適当に回しても、当然ながらヒットしない。


 だが、鑑識の人間なら、指紋の付着具合などから数字を割り出すことが出来るかもしれない。



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