新選組へ ~ 連理之枝 ~
お芳と輝知に懐かれた

「夏弥様!!」

俺を見かけると、嬉しそうに声をかけてくる

「夏弥でいいよ」

たぶん、お芳は寂しかったんだ
友と呼べるようなものも、ここにはいない

しきたりとかに縛られて、退屈で

「お芳、輝知と遊ぼう」

「夏弥、いいの?」




俺が女だと知ったら

慶喜が毎日俺の所に来ていると知ったら

お芳は、俺を嫌うだろう…

お芳がさみしいのは、俺のせいだ



あまり深く関わってはいけない

そう思ったのに



ひとつき以上、毎日

昼間にベッタリしてる

もちろん、仕事以外だ



慶喜には、輝知が気に入ったと言い

夜、預かるようにした

そうすれば、お芳の所に行くだろ

輝知は、本当にいい子だ

泣かずに寝てくれる



紅葉狩りの話が出た頃


慶喜に家茂の所に行きたいとお願いしたが
ダメ

町に出たいとお願いしたが、ダメ

料理をしたいと言ったが、ダメ
卵焼きを作った時に女中達が、うるさくて
騒がれると困るんだとか

すべて、ダメ

俺にも世話役がいる、女だと知っている

お茶を頼むのも気が引ける

持ってきてくれた時しか飲まない



疲れる





慶喜の弟を容保の養子にする計画をたて

昭徳と昭則を容保に紹介する



慶喜が俺を側室にしたいと、懲りずに言いだした

今回は、俺がダメと言った

もういいかなと思い、打ち明けた


「親王宣下を受けている」


そう、俺は皇室の男子として認められている

公表は、されていない

有栖川宮や中川宮は、知っている

母親は、会ったことがない


俺の母親は、孝明天皇の姉

桂宮を継承した敏宮様


結婚していない者同士の隠し子



俺は、存在しては、いけなかった


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