新選組へ ~ 連理之枝 ~
屯所に戻ったら、佐々木さんがヘラヘラ
しながら、近づいてきた

佐「どうした?浮かない顔して… 」

俺「いつも、こんな顔です」

佐「ほれ」

包み紙を出してきた

毎回くれるこの包み紙は、慶喜様が

俺にくれる千菓子

紅葉からって思わせるように、紅葉の形

包み紙を開けたら

今日は、桜だった

くしゃっと紙を元に戻して、懐に入れた


俺「ありがとうございます」

佐々木さんと目を合わせなかった

スタスタと歩く



部屋に戻った



スー 閉めた襖が開けられた


土「誠…」 グイッ


腕を引っ張られ、土方さんの方へ
向きを変えられた

俯いた顔をあげられなかった

土「誠…からかわれたんだ!
わかるだろ?
あの2人、本気じゃなかったよ!」

俺「そんなの、どおでもいいです」

土「そんな風に見えねぇよ
今、落ち込んでるか?」

俺「はい」

土「慰めるからな!」

抱きしめられた

俺も、土方さんを抱きしめ返した

本当、甘えるとか…どうしたんだ俺

優しく 優しく 背中を擦ってくれた


俺「土方さん…今度から、教えて下さい
良いことも、悪いことも
終わったことだって思っていたけど
そうじゃないかもしれない
何があって、どこの記憶がないのか
知りたくなりました」

土「わかった」

俺「土方さん…俺、新選組のことは
忘れたくないです」

土「忘れて欲しくねぇな……
誠が新選組のこと忘れたりしたら
新選組が潰れるかもしれねぇぞ?
近藤さんが慌てまくってよ」

俺「ふふっ想像できます」

土方さんを見上げ、笑った

土「ふっ だろ?」

土方さんも笑った



忘れたくない



ぎゅっと抱きしめた

強く

思いっきり


土方さんの胸元に、グリグリと頭を押し付けた

泣いてしまいそうだから


怖いよ


怖いよ


土方さんが背中をずっと撫でてくれた

夕餉の知らせが来たけど

俺は、遠慮した


食欲がない

千菓子を一粒食べた

今、梅も咲いてないのに桜だなんて

春を先取りするにもほどがある


夕餉から戻った、土方さんから

桜が咲いたら、二条城での花見に新選組が

招かれたと聞かされた


それで……桜かぁ


もっと、よく目に焼き付けてから
食べればよかった


木の紅葉を見てたら


土「会えるな?」

俺「はい」


土方さんは、紅葉様のことを言っている

俺は、慶喜様のことだけどな

佐々木さんもあの口づけ以来、紅葉様が
実在したとはな…って
てっきり、慶喜様の偽名かと
って…言っていた
若い2人の恋、応援する!
とかも言っていたな



早く会いたい



忘れる前に、会いたい



慶喜様

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