君に捧げる花束を
無意識に一歩遠ざかると、野風も一歩歩み寄ってくる。
それを拒否するようにもう一歩後ずさると、野風は逃すまいとばかりに距離を縮めてきた。
一歩、また一歩と攻防のようなやりとりをしているうちに、清花の背中にトンと軽い衝撃が伝わった。
壁に当たり、行き止まりになってしまった。
俯いていた視線を上げると、真っ直ぐにこちらを見つめてくる野風の瞳と交わった。
久しぶりに正面から見た幼馴染みの表情は飄々としていて、話さなかった期間の前と何ら変わりない眼差しを送ってくる。
無性に懐かしく感じて、知らず知らずのうちに目頭に熱いものがこみ上げてきた。
「野風………、私の近くに寄っちゃダメ…。」
なるべく声を抑えて拒絶すると、野風はぐいっと眉を上げた。
「……函南君もそうだけど、あんたも充分意地っ張りだよね。」
野風は清花の言葉も無視すると、清花の隣に立ってやれやれとばかりにため息をついた。
呆然と立っている清花の腕を掴むと、固くなった教室の空気を無視して、しんと静まり返った教室を尻目に、野風は無為を言わさず教室を出た。
清花を連れて、屋上に続く階段の所に向かい、段差に腰掛けた。
「みふえって子ね、」
「みてきちゃんだよ。」
すかさず突っ込みを入れる清花がずいぶん落ち着いていているのを見て、野風は少しだけほっとしたようだった。
「ふえでも、尺八でもいいけどさ…。
あの子の親が政治家と医療関係に携わる金持ちなんだってよ。」
「……そう、なの。」
大して驚かない真実だった。
大手業次期社長のお嫁さんにふさわしいご両親だ、と単純にそう思った。
「その立場を使って、私達を脅してきた。
きよに関わったり、ラインしたら、親をクビにするとか、保険を停止させるとか…。
あほらしくて適わんわ。けど…、
…まりあ達も、下手に抵抗できないみたい。」