君に捧げる花束を
まりあ達が話しかけてこなかったのはそういう訳だったんだ。
まあ、そもそも清花が必要な時以外、教室にいなかったのだが。
あの、なんとも気まずい距離感の訳を理解して、納得した気持ちがすとん、と胸に落ち着いた。
当たり前だ。
そんな雲の上のような強大な権力を前に、高校生が下手に刺激したり、太刀打ちできるわけないよ…。
だから、まりあ達が避けてきた事を責める気持ちなど湧いてこなかった。
それよりも、そんな風に脅されている皆が心配でたまらなかった。
胸元のワイシャツをきゅっと握り締め、唐突に語られた真実に清花が不安に駆られていると、野風が無言でケータイを見せてきた。
『まりあ:清花は大丈夫なの?美笛ちゃんは本気でやばいって(><)』
『美乃莉:あたしはきーちゃんの味方だからって伝えて。』
野風が指でケータイの画面をスライドさせる度、清花の事を案じてくれる皆の言葉が連なるように表情されていく。
嘘…。
信じたい。
信じられない。
感極まって、思わずワイシャツを握っていた手を口元で覆った。
また、友達になってくれるかな。
もう無理かな…。
心の中は沢山の躊躇いと怯えた気持が澱んでいて、外に漏れでないように必死で心に蓋をしてたのに…。
あっさりその壁が崩れた瞬間だった。
みんなの言葉に、嬉しくて胸が熱くなる。
「なんで返事くれないの。めっちゃラインしたんだけど。」
ブスっとした野風の顔。
いつもと変わらない。幼馴染み。
それが見れたことが単純に嬉しくて、ほっとした。
じわりと視界が歪むのを慌ててこらえた。
「ケータイ…電源切ってて、見てなかった。」
野風が何度目かわからない、盛大なため息を吐いた。
「あんたのことだから、どーせひとり抱え込んで、あーでもないこーでもないってグズグズ悩んでたんでしょうよ。ほんと馬鹿だね。」