幸せそうな顔をみせて【完】
「でもさ、今日の副島センセイっていつも通りだったと思わない?

 金曜日のことを聞いていたから、もう少し変化があると思って、今朝のミーティングを楽しみにしていたのに全く変わらないし、葵の方を必要以上に見ることはないし。金曜日のことがなかったら、誰も葵と付き合っているとは思わないだろうな」


 それは私も思ったことだった。


 副島新の中で私という存在がどうとかというより、公私混同は全くしないという感じが見て取れる。私としてもいきなり副島新の会社での態度が変わると周りを気にしてしまうから、今の方がいいと分かるけど、それでも少し淋しい。


 なんて自分の我が儘さを感じていた。


「それにあの子。副島センセイに質問していた子。名前はなんだっけ。うーん。総務部の…えっと」


 未知は記憶の糸を手繰るように彼女の名前を思い出していた。でも、その名前が浮かぶことはなくて、それは私も香哉子も一緒で…。


「ま、いっか。あの子って副島センセイのこと好きそうだよ。何かの飲み会で聞いたことある。副島センセイの熱烈なファンが総務に居るって」


 それは私も聞いたことがある。


 副島新は人当たりもいいし、仕事も出来る。それだけでもモテる要素はあるのに、スポーツで培われた細身だけど筋肉質な身体と綺麗な顔。モデルと言ってもいいような副島新の姿は客観的に見ても素敵だと思う。


「でも、葵の敵じゃないね。だって、葵が好きっていうよりは副島センセイが葵のことを溺愛してるんだから」



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