幸せそうな顔をみせて【完】
 携帯を見つめていても、一向にメールの一本も入らない。


 何度も何度もメールの受信ボックスを見るけど、何も変わらない。送られてくるのは広告メールとメルマガくらいで待ちわびているメールはなかった。さすがに月曜日から二本目のビールに手を伸ばすことはなかったけど、サンドイッチも食べ終わった今、何もすることがなくて、シャワーを浴びてから、早々にベッドに潜り込むことにした。


 まだ少しの酔いは残っていて、その酔いでぐっすり眠れると思った。実際に目蓋は少し重くなってきている。



 ベッドに潜り込み、寝ようと思ったけど、どうしても副島新の声が聞きたいと思って…私は思い切って電話をしてみることにした。同期とはいえ、個人的な付き合いはなかったから、副島新本人に電話をするというのはあまりない。


 だから、妙に緊張する。


 時間は夜の11時。

 
 多分、自分のマンションに帰って寛いでいることだろう。だから、我が儘かもしれないけど、一言でいいから声を聞きたい。そんな気持ちが私を突き動かす。


 携帯の画面を撫で…副島新の番号に触れると通話の呼び出し画面になったのだった。耳に当てると呼び出し音はするけど、一向に取られることはなくて、急にプツッと音がしたかと思うと、留守番電話に切り替わる。そして、丁寧だけど無機質な音が私の耳に響いてきた。


 まさか留守電になるなんて…。


 副島新はまだマンションに帰ってないのだろうか?
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