幸せそうな顔をみせて【完】
 携帯を切ると、ベッドの上に置くと自分で思っていたよりも大きな溜め息が零れた。でも、そんな溜め息は空気に溶けていき、少しずつ部屋に暗さをもたらすような気がした。ただ、電話が繋がらないだけでこんなにも溜め息が零れる。


 私が思うほど、副島新は私のことを好きではないのかもしれない。もしも本当に好きだったら、今日くらいは一本くらいのメールはくれていいと思う。一度こんなことを考えると次第に落ち込んでいくばかりで…。


 自分が嫌いになる。


 寝ようとベッドにもう一度横になり、目を閉じると、玄関のインターフォンが鳴ったのだった。夜の11時を過ぎたこの時間に私のマンションに来るのは実家に住んでいる香哉子くらいしか思いつかない。でも、香哉子は来る時は必ずメールをしてからくる。


 香哉子じゃないなら…。まさか。


 私はインターフォンの画面を見ると、そこには……同じフロアに住んでいる同じ会社の女の人。副島新ではなかった。経理課の人だったと思う。顔はよく知っているし、他愛無い世間話もする。だからと言ってこんな夜中にインターフォンを鳴らされるのも可笑しい。


 用事があるなら、ここまで入ってきて玄関のチャイムの鳴らせばいい。


「はい。どうしました?」


「瀬戸さん。夜遅くにごめんなさい。実はエントランスの鍵を落としたみたいでないの。部屋の鍵はあるから、申し訳ないけど開けて貰えるかな?」


 エントランスの鍵を忘れたなら中には入れないだろう。


「はい。すぐ開けます」
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