幸せそうな顔をみせて【完】
 エントランスの自動ドアを開けると、私はインターフォンのボタンを押して画面を黒くした。彼女も自分の部屋の鍵はあると言っていたから自分の部屋に帰りつくことが出来ただろう。私はもう寝ようと思って今度こそと思い、ベッドに横になると、今回は玄関のドアのチャイムが鳴らされる。


「まさかお礼に来たの?」


 さっきの経理の人は何度か話したことがあるけど真面目で律儀な人だから、お礼を言い来たのだろうか?こんな夜中だからいいのにと思いつつも、同じ会社の人を前に寝たふりも出来ずに私は身体を起こして、電気をつける。玄関の歩いて行こうとして、部屋の片隅にある鏡がパジャマの私を映していた。


 まだ、寝ていたわけではないので髪は乱れてないけど、それでもパジャマでというのは…憚られる。



 私は肩にカーディガンを掛けるとゆっくりと玄関のドアを開けたのだった。隙間で挨拶をすればいいと思った。それで相手もこの時間にこんな格好というのも理解してくれるだろう。徐々に隙間を開けながら外を覗くと、そこには誰の姿も見えなくて。


 もう少しと思い、開けても姿は見えない。


「わざわざすみま……」


 もう少しと思い、思いっきりドアを開けてみて私は目を見開いた。そこにいたのは経理の女の人ではなくて私が会いたいと思っていた『副島新』その人だった。スーツのジャケットを片手に持ち、副島新は私の目の前に立っている。顔に少しの疲れは見えるけど、それでも、端正な顔は私の視線を釘付けにした。
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