幸せそうな顔をみせて【完】
 私の部屋の玄関は一人暮らし用だからか、とても狭い。狭いたたきの横には靴箱があるけど、それも何足かしか入らないような小さなもの。そんな狭い玄関で私は副島新の腕にしっかりと抱き寄せられていた。汗臭いとは思わなかったけど、ドキドキしてしまう。


 目の前には好きな人の綺麗な顔があり、耳に届くのは私を求める優しい声。触れる身体に回された逞しい腕と女の人とは違う固い身体。そして、私をドキドキさせながらも安心させる香り。胸の奥がキュッとなるのは、この香りを私が好きだからだと思う。


 そして、私を包み込みながら唇を重ね、お互いの舌を絡め合う。


 私の全てが副島新に染められていた。


 長いキスだったと思う。何度も何度も唇を重ねながら、私はこんなにも副島新を欲していたのだと思い知る。たった一日離れただけなのにこれでは先が思いやられてしまう。恋というのはこんなにも簡単に私を変えてしまうのだろうか?


 そして、私と同じように副島新も変えた気がする。


 以前の私が知る副島新ならこんな時間に電話もメールもなしで部屋に来たりしたりはしない。元々、衝動で動く人ではないから、その行動に驚きつつも、会うことが出来た嬉しさの中に私はいた。


「私も会いたかった」


 そんな言葉が私の口から素直に零れていた。副島新があまりにも素直に自分の気持ちを口にするから、私もつい自分の気持ちを口にしてしまう。


 こんな私も嫌いじゃない。



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