幸せそうな顔をみせて【完】
 副島新は唇を離してからもしばらくは私の身体をキュッと抱きしめていた。ドキドキしながらも、安心してしまう私は矛盾だとは思いながら顔が綻ぶ。この腕の中にいると、今日一日寂しいと思った心が癒され、癒されるだけでなく、温かくなっていった。


「葵がそんな可愛いことをいうとマジでヤバい。このまま押し倒したい気分だけど、明日も仕事だから今日は帰る。でも、週末は俺のマンションだから金曜日の夜から泊まる準備をしてこいよ」


 長いキスからの吐息を零した後に副島新からの言葉につい笑ってしまう。副島新はいつもの『俺様』口調が戻っていて私の週末の予定があるかもしれないというのを確認もせずに泊まるのが決定というようなことを言う。もしも私の用事があったらどうするつもりなのだろう。


「私に用事があるとは思わないの?」


「あるかもしれないけど、葵のことだったら、俺に会いたくて用事は平日に終わらせる」


 妙に断定的な言葉に笑う。


 間違ってはないけど、この自信はどこから来るのだろうか?そっと、視線を上げると口の端を上げる副島新の顔が私の視界に入ってきた。入ってきただけでなく、目を離せないくらいに光を放っている。そして、この自信に溢れ、自分にも厳しいこの人が…好きだと思うから、仕方ない。


「金曜日に泊まりに行く」


「待ってる」


 そういうと、副島新はもう一度キュッと私の身体を抱き寄せたのだった。
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