幸せそうな顔をみせて【完】
「なんかすごく雰囲気のいい店だね」


 淡い光が部屋の中を満たしていて、和モダンのシックでスタイリッシュな空間は女の子の心を擽る。こんな素敵な雰囲気の店で、どんな料理が出てくるのだろうと楽しみになってしまう。メニューの表紙も木製で、開くと綺麗な写真が並んでいた。和食なのにどこかフランス料理みたいな盛り付けで、女の子が好きそうなものばかりで、どれもこれも美味しそう。


 お腹も空いているし、メニューを見ながらテンションが上がる私は次第に最初の緊張は解れていっていた。目の前にあるメニューから目が離せない。見るだけでお腹が鳴りそうだった。


「何にしようかな。迷う」


 そんなことを言いながら副島新を見ると、じーっと私の方を見ていた。


「何?もう一つメニューあるよ」


「いや。俺は何でもいいから葵が好きなのでいいから」


 副島新はスーツの上着を脱ぎ、ネクタイを少し緩め、足を崩した。そして、私が見ているメニューを横からちらりと見るとボソッと言った。


「なんこつとエイひれの炙りはいれといて」


「了解」


 一緒に居て楽だと思うのは副島新の醸し出す雰囲気があるのかもしれない。会社での副島新は仕事が出来る男で妥協を許さないし、完璧を目指す。居酒屋で何度か一緒に飲んだりした時は『同期』であって、今とは違う。一緒に居る時間は付き合っているという事実が微妙に色を足していた。
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