幸せそうな顔をみせて【完】
 ビールで普通はそんなに酔ったりはしない。でも、心を根底から揺さぶると簡単に酔いが回る。一緒にいた土日の甘さがいつもの平日の当たり前の日々を味気なくさせ、寂しさを襲わせるていた。そして、やっと二人っきりに慣れたというシチュエーションとビールの酔いが意地っ張りの私を簡単に素直にさせる。


 そんな私の言葉に副島新は驚いたみたいだった。目を見開き、飲みかけていたビールをそのままに私の方を見つめている。でも、副島新が驚くのも無理はない。私はお酒には強い方で今まで、私はたった二杯のビールでこんな甘えたことを口にしたりすることはなかった。それなのに今日は…なんだろ。今日は…絶対に可笑しい。疲れているからだけだろうか?


「葵、二杯目で酔ったの?」


「うん。多分、酔ってる。だめ?」


「いや」


 そういうと、副島新はクスクス笑いだした。このタイミングで笑い出すなんて、思い返してもどこが笑うポイントなのか分からない。自分の言葉を反芻してみても何も笑いのツボなんかない。



「何がそんなに可笑しいの?」


「いや、葵を好きになってよかったと思っただけ」


「意味が分からないんだけど」


「自分の言葉を後悔するくらいに葵が可愛いってこと」


 自分の言葉を後悔するくらいって??意味が分からない。でも、目の前にいる副島新はとっても優しい顔をしている。


「後悔はよくないと思うけど」


「そうだね」


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